もともと読書は好きだが、小説はほとんど読んだことが無かった。小説というものが、最も古く最も親しまれたエンターテイメントであることは認識しつつも、そこに嵌まることは無かった。あの文庫本の真っ白とは言いがたい黄色がかった紙を見ると、何か古くさいものを感じていた。それよりは、PCの画面を通してみる自分にはその裏の構造(HTML/CSS)まで透けて見える世界が好きだった。

数年ぶりに自分だけの自由な時間が出来て、それでも試験勉強なるめんどくさい大嫌いなものに向かわなければいけないときに、不意に活字を読みたい衝動に駆られた。同僚のかわいい子が小説が好きな子だったので、おすすめを借りたら、モノの見事に時間を切り取られるほど熱中した。その子はセンスが鋭く、また頭も良い子で、抜群に選択のセンスがあると感じていた。というか可愛い子だからそう思いたい。

そんな時に人生で初めて金銭的に余裕がある数ヶ月があり、そこで、前々から気になっていた電子書籍に手を出してみたくなった。自分としては、Androidタブレットは持っているし、電子ペーパー技術に興味があったし、充電の手間は嫌だったし、楽天が商売上手とは思っていないので、自然とAmazon Kindle PaperWhiteを選択した。安い方のWi−Fiのみモデルでも良かったが、そのとき金があったのと、やはりいつでもどこでも本が買えるという欲求を満たしてくれるのが、電子書籍の最大の利点だとも思っていたから、3G付きモデルを購入した。

安くて早くて旨い

Amazon Kindle PaperWhiteは、良く出来た端末で基本的に不満がないほど良く出来ている。それでいてAmazonが展開するKindleストアは、私のような小説を全然読まなかった男にしてみれば、安く大量に良い小説が読める最良のストアだ。とはいえ、実際の中古本よりも安くは無く、それでいて売ったりも出来ないのを価値に感じない人もいると思う。私はそうではなく、むしろ部屋に本がこれ以上増えないことを歓迎したい気持ちが勝る。本好きな人は紙じゃ無いと嫌だというし、本棚に並んだ本を見ているだけで満足できる人もいるだろう。実は私もその口で本棚に大量の本が並んでいる。しかし、それらは小説では無くほとんどが実用書か学術書だ。それらは実際の必要に駆られて並んでおり、すでにスペースを本棚2個分くらいオーバーしてオーバーした本は職場にあるか押し入れにあるかのどちらかになっている。私の場合、小説は一度読んだらまた再度読み直すことはほとんど無いだろうから、場所をとらずに、アカウント情報に紐付けられていつでも読みたいと思ったときに読める方が嬉しいのだ。

バックライト付き電子ペーパーは、夜のバルコニーでたばこを吸いながらでも読めるし、寝る前にも読める。また本体も軽く、電車で片手がつり革、片手がKindleで読み進めることも出来る。紙の本だとしおりが面倒だし、ドッグイヤーは好きじゃないし、ページをめくるのが片手だとうまくいかない。私は手が小さいし、そんなに器用でも無い。

それにくわえて、早川書房などが一斉にセールを行って、購入意欲をかぎ立ててくれて、あとは芋づる式に本をぽんぽん購入してしまっている。300円とか500円とかでAndroidのゲームアプリを買うこともあるけれど、それよりも財布のひもが緩んでいる。お得感があるし、自分が小説というものに嵌まってきていて、アプリよりも価値を見いだしているからだろう。

良さに気付くのはシリーズものに嵌まって止まらなくなったとき

「探偵はBARにいる」という映画が大泉洋主演でやっていたのを記憶していたが、その原作のススキノ探偵シリーズがセールになっていたので、第一作を読んでみたところ、大嵌まりしてしまった。もともと推理ものは好きだし、探偵モノも好きなので、当然なのかもしれないが、おもしろくて仕方が無い。

1冊読んで、また次のやつ、それも読み終わって、あぁ止まらない、次もだ!…と行くとき、次の日の朝の本屋が空く時間を待たなくて良く、またそのシリーズの次の買いたいヤツだけが本屋に在庫が無いという悔しい思いもしなくて良い。これがどれほど快適か、というのをこのKindleで思い知らされた。他方で、本を売る側からしても顧客の購買意欲が最大限高まったところを逃さなくて良いという利点があるのでは無いか。

小説というエンターテイメントは電子書籍でまた違う形を見せると思う

小説というエンターテイメントは、本屋や図書館、文芸雑誌や文学賞などで醸成されてきたと認識している。でも、このKindleは、それらをある種ケータイ小説に近いところに持って行くのだと思う。どこでもいつでも手軽に読めて、在庫に顧客が悩むことはなくなる。中間マージンが廃され、より多くの収益が数社の元締めと作家にもたらされるだろう。作家と読者がより強く繋がり、それらは多数の幸福と多数の不幸を招くだろう。小説はより身近で、より小粒な小説家がスマッシュヒットで食べていけるようになるかもしれない。それらは、小説の低廉化を招くが作家にはより多くの収益をもたらすとスマホアプリマーケットが一部証明している。
小説というエンターテイメントは、本屋や図書館、文芸雑誌や文学賞などで醸成されてきたと認識している。でも、このKindleは、それらをある種ケータイ小説に近いところに持って行くのだと思う。どこでもいつでも手軽に読めて、在庫に顧客が悩むことはなくなる。中間マージンが廃され、より多くの収益が数社の元締めと作家にもたらされるだろう。作家と読者がより強く繋がり、それらは多数の幸福と多数の不幸を招くだろう。小説はより身近で、より小粒な小説家がスマッシュヒットで食べていけるようになるかもしれない。それらは、小説の低廉化を招くが作家にはより多くの収益をもたらすとスマホアプリマーケットが一部証明している。

紙を愛する読者には受け入れられないかもしれないが、私のように小説の中の世界を愛する人間には幸せなことだと思う。より多くのより多様な作家が存在しうるエコシステムがすでに形成されつつあるのだ。
紙を愛する読者には受け入れられないかもしれないが、私のように小説の中の世界を愛する人間には幸せなことだと思う。