長い恋が終わった。
彼女を好きだと気付いて、夢中になって、一緒の大学に進んで、フラれて、…ずっと、好きでいた。
いつしか他の子を好きになって、付き合って、…それでも、ふと彼女を思い出すと心が痛んで。
瞳の奥 閉じても
貴方を瞼が憶えているの――――― 陰陽座「甲賀忍法帖」
この歌の歌詞のように、目を閉じても、、いや、目を閉じて他になにも見えないときこそ彼女が見えた。好きだった。どうしようもなく。
想えば心が痛んだ。想えば無表情ではいられなかった。
会いたくて会いたくて。
何もかも失ってしまったような気がして。何もかもどうでもよい気がして。
世の中のすべてがぼやけて見えた。そこにあるのに、そこには何も無いような、おぼろげな現実と乖離した中を過ごしていた。
それは長い長い道のりだったけれど、ようやく心が軋む感覚を失ってきた。
瞳を閉じても、瞼に浮かぶ彼女の笑顔はぼやけ、脳髄に響いてこびりついている彼女の声は、遠く彼方から聞こえるかのようにかすれている。
もうきっと彼女を想い、心を軋ませることは無くなっていくのだろうと思うと少し寂しい。
長かった道のりを見渡すと、そこにはいろいろなものがあった。それは自分に必要なものだったのだろうと思う。
もう一度、違った意味で彼女に会ってみたいけれど、何を話していいかわからない。きっと、彼女は、いつものように突拍子もないとぼけたことを言って、ボクを笑わせてくれるのだろう。
そういうところに惚れたんだ。だから、ボクとは交差しない道を歩んでも、幸せになってほしい。