Xマウントの標準ズームレンズは、どれを選ぶべきか考えてみる
私が、XマウントのX-T4を購入したのは、肩から提げて散歩しながら写真を撮るためでした。描写にはこだわらず、標準ズーム一本だけつけてと思っていましたので、とりあえず1本目のレンズとして、軽量で安価で標準画角をカバーしているという点で、「XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II」を購入しました。
次に買うレンズをどうしようかなと色々考えているのですが、Xマウントで、標準域ズームレンズの選択肢が多くて選ぶの難しいと気づいたため、買い換えるとき用にまとめておこうと思い立ちました。
Xマウントで買い換えるとしたら、どの標準ズームを選ぶかという観点から、現行のラインナップでポイント毎に比較してみました。富士フイルム純正、SIGMA製、TAMRON製も含めて検証します。
最後の方に比較表も掲載しています。
比較対象のレンズ
本エントリで、比較対象とするレンズは、下記の8本になります。
- 富士フイルム製
- XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II
- XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
- XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS
- XF16-80mmF4 R OIS WR
- XF16-55mmF2.8 R LM WR (レッドバッジ)
- XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR (最新型)
- SIGMA
- Contemporary 18-50mm F2.8 DC DN
- TAMRON
- 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD
XFレンズとXCレンズの違い
富士フイルムのXCから始まるシリーズは、廉価版とでもいうべきシリーズで、プラスチックのマウントで、絞りリングが付いていません。その代わりに軽量で安価というレンズです。
広角端の焦点距離(15mm, 16mm、17mm、18mm)
広角側は、1mmの差が結構大きいイメージです。標準域を主に用いるのであれば、20mm~40mmくらい(35mm判換算で、30.5mm-61.5mm)の画角が使えれば良く、広角側はそんなに気にならないという人も多そうです。
一番広い15mmの画角を持つのが、XCシリーズのXC15-45です。15mmがどうしても欲しいという場合には、一択になります。
16mmで良いという場合には、一番選択肢が多そうですが、富士フイルム純正のものしかありません。
TAMRONだけ、広角端が17mmで、TAMRONを選ぶ際には、ここがネックにならないことが必要そうです。
18mmあれば十分という場合には、どのレンズでもよさそうです。
望遠端の焦点距離(45mm、50mm、55mm、70mm、80mm)
望遠端は、APS-C用の標準域ズームというには、50mmまでは通常対応しているのが多いかなというイメージです。この点、一番広角端が広い15mmに対応していた15-45mm以外は、50mm以上の望遠画角に対応しています。
TAMRONが、70mmに対応し、富士フイルム製のF4通しの小三元ズームが、80mmまで対応しています。ここらへんをどう捉えるかが、1つのポイントかなと思います。
50mmまであればいいやという場合は、XC15-45以外ならどれでも良さそうです。より広い望遠画角が欲しい場合には、TAMRONの70mm対応のものか、富士フイルムのF4通しの80mm対応のものかになるかなと思います。
F値(2.8通し、それ以外)
富士フイルムの「XF16-55mmF2.8 R LM WR」(通称「レッドバッジ」)、SIGMA、TAMRONは、F2.8通しの大三元標準ズームになります。特筆すべきは、同じF2.8通しでも、SIGMAはその重量が285gと軽量であるということです。富士フイルムのレッドバッジは、655g、TAMRONは、525gと比べると、半分以下~それ以上軽いということになります。
この点は写りにも影響するため軽ければ良いというわけでもありませんが、圧倒的にSIGMAのF2.8通しが軽く、本体に付けっぱなしにする用途としては、最も良さそうです。重さ分、写りに差があるのか、写りをどの程度重視するのかにもよりそうですが、かなりの差があるので、重量だけみるとSIGMA一択という人も居そうです。
その他のレンズのF値を見てみると、XCシリーズは、F3.5始まりで、それ以外は、F2.8始まりのものが多いです。富士フイルムの16-80mmのみ、F4通しの小三元になっています。
明るいレンズが良いということであれば、XCシリーズとF4通しは除かれ、F値が全域で変わらない方が良いという点では、F2.8通しかF4通しのいずれかになるのかなと思います。
気になるのは、富士フイルムの2024年6月末くらいに出たばかりの最新型「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」が、F2.8始まりなのはこれまでのモデルとかわらないものの、望遠端ではF4.8とこれまでよりも少し暗くなった点です。ボケ量という意味では、望遠という点でカバー出来るかなとは思いますが、少々ネガティブなイメージにはなります。
重量
一般に写りが良いレンズほど重い、みたいな話もあるので、軽ければ軽いほど良い、ということでも無いですが、本体に付けっぱなしで持ち歩く用途の標準域ズームレンズ、と考えると、個人的には軽いことは非常に大事だと思っています。
この点、XCシリーズは軽量で、おそらく写りが良いと思われるレッドバッジが重いのは、「まぁ、そうだよな」と思うところです。重くても写りだ!という方は、レッドバッジを選ぶことになるのかなという感じがしています。
この点、2024年6月末くらいに出たばかりの最新型「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」が、240gと非常に軽量なモデルとして刷新されたのは特筆すべきことかなと思っています。それまでの標準域ズームレンズなXFレンズというと「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」かなと思いますが、こちらは、310gです。
光学手ぶれ補正が廃されたためかなとは思いますが、70gほど軽く、XCシリーズを除けば最軽量です。
XCシリーズと上記最新型を除いて、次に軽いのが、SIGMAのF2.8通しレンズです。大三元ズームであるにも関わらずこれだけ軽いのは、繰り返しになりますが、やはり特筆すべき点かなと思います。
大きさ
大きさでは、一つ抜けて小型なのは、沈洞式のXC15-45かなと思います。沈銅を解除して伸ばしても65.2mmなので、やはり小さいです。コンパクトさが最も重要、ということであれば、XC15-45になるかなと思います。
次に大きさという点では、最新型の「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」かなと思います。従来型の「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」の方が、収縮時の大きさはわずかに短い(70.4mm)ですが、インナーズームを採用しているため、ズームしても大きさが変わらず、どの画角でも71.4mmという長さです。
それ以外のモデルでの比較で言うと、従来型の「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」やSIGMAがコンパクト寄りです。レッドバッジとTAMRONが重さに比例して大きく、「XF16-80mmF4 R OIS WR」がその間にある、みたいなイメージです。
基本、重さに比例して、サイズも大きい感じですね。
最短撮影距離
XCシリーズは2つとも、かなり寄れます(15cm、13cm)。さらに寄れるのがSIGMA(12.1cm)で、軽くてコンパクトでF2.8通しで明るくて、寄れるというスーパーな感じがしてきます。TAMRONも寄れる方です(19cm)。
富士フイルム最新型の「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」が、23cmと十分寄れるモデルになっており、さらにインナーズームで鏡筒が伸びないので、寄る際には便利そうです。
それ以外は、横並びで30cm~35cmくらいですね。
価格
XCシリーズが安価であることは間違いありません。
それ以外で、F2.8通しの大三元ズームで比較すると、富士フイルム純正と比較して、SIGMAやTAMRONは、およそ半額になります。F2.8通しで安いのが良いなという場合には、SIGMAかTAMRONになるのかなと思います。
最新型の「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」は、新品で10万円をギリギリ切る位かなと思いますが、出たばかりということもあり、中古の在庫は全然ありません。一方で従来型の「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」は、中古在庫は豊富になり、5万円前後で購入ができます。
「XF16-80mmF4 R OIS WR」が、中古で7.4万円前後という点をどう捉えるかですが、比較している中では一番ズーム領域が広い点をポジティブに捉えるなら選択肢に入りますが、そうでもない場合には、こちらよりも、F2.8通しのSIGMAかTAMRONの方が良いという考え方もありそうです。
新しさ
レンズの写りなどを比較するに、新しい方が必ずしも良いとは言えないですが、新しいモデルの方が改善されている事も多いですし、より写りが進化していることも多いです。
Xマウントのカメラ本体につき、4000万画素センサーになったのが、2022年10月の「X-H2」からになります。それ以降に出ているレンズは、4000万画素センサーを前提に設計されているかもと考えると、その時期よりも前か後かというのは、一つの指標にはなりそうです(私は「X-T4」しか持って無いので、その点は関係無いですが。)。
最新型の「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」が出たばかり(2024/6)なので、最も新しいのは間違いないです。4000万画素センサーを踏まえていることも間違いありません(公式サイトにも「40Mの高画素化に対応しながらも、」と書いてあります。)。次に新しいのは、2022年にでたSIGMAとTAMRONのF2.8通しのレンズ2つになります。新しさで選ぶならここらへんでしょうか。ただ、この2つですら時期的には4000万画素センサー前提の設計になっているかは微妙なところです。そうなると、そもそも4000万画素センサーを踏まえた設計になっているのは、2024年7月現在、富士フイルムの最新型のみ、とも考えられます。
XF16-80mmとXC15-45mmが、2019年と2018年で、レッドバッジがやや古く2015年です。
従来型の「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」は、2012年と古いです。Xマウントシステムが始まったのが2012年ですから、まさに初期のレンズ、ということになります。さすがに12年の差があると考えると、今から購入するなら、最新型の方が良いのかなと思ってしまうところです。
どう選ぶか
いろいろな観点で比較してきましたが、いろいろ見ると、結局「どうしよう…」となりました。レンズ同士を一定の観点で比較してみます。
XCシリーズかXFシリーズか
XCシリーズは、安価で軽量という点で間違いありません。XC15-45は、最新の「X-T50」でもキットレンズに採用されており、軽量さと安価さ、とりあえずのレンズとして良い選択肢かなと思います。
富士フイルムか、SIGMAか、TAMRONか
F2.8通しの大三元標準域ズームレンズの3つから選ぶとなると、純正で大きくて重い富士フイルムレッドバッジか、軽くて小さいSIGMAか、富士フイルムのやつよりちょっと軽く安いTAMRON、いずれを選ぶのか、という感じになります。
絞りリングの有無やズームリングの回す方向などスペックに現れない点を気にするなら、純正のレッドバッジになるかなと思います。
F2.8通しでかなり軽量コンパクトを実現しているSIGMAも軽さは正義と考えると最も良い選択肢かなと思います。ただし、広角端の画角はもっとも狭い18mmです。
あとは写りの違いをどう捉えるか、という感じにはなるかなと思います。ここらへんは、作例を見るか、レンタルなどして実際に撮影してみるしかないですね。
【追記】富士フイルムのレッドバッジは、バージョン2が開発されており、2024年中に発表という噂があるようです。急ぎで無いなら、これを待つという手もあるかもしれません。
富士フイルムの標準XFレンズは、従来型か新型か
「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」(従来型)と「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」(新型)は、どちらを選ぶべきかという話です。
前者は、Xマウントシリーズの初期のレンズで、長らくX-Tシリーズのキットレンズとして採用されていましたが、後者は、2024/6に発売され、最新の「X-T50」のキットレンズとしても採用されており、色々な情報を鑑みると、後継モデルということになりそうです。公式サイトの動画を見ても、「次の10年を担うレンズ」というような表現もされていますし、企画趣旨も従来レンズの刷新となっています。
新型は、従来型に比べて、広角端が2mm広がり、望遠端が5mm狭く、かつ少し暗くなり、光学手ぶれ補正機構がなくなったが、70g軽くなりました。防塵防滴が付いたり、インナーズームだったり、4000万画素センサーを踏まえた設計になっていたりするようです。「これからの10年を担うレンズ」とまで言われるレンズですので、妥協も無さそうですし。直近で出てきている作例も非常に良さそうです。
そういった点を踏まえると、価格が許せる限りは、新型にしておくほうが後悔は無さそうです。
まとめ
やっぱり全然まとまりませんでしたが、以下のような感じになるかなと思います。
安価性を求める
XCシリーズ、あるいは従来型の「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」のいずれかでしょうか。
F2.8通しで、軽量コンパクトを求める
SIGMA
軽量コンパクトを求める
XCシリーズ、新型「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」、SIGMA
写りの良さを求める
新型「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」、レッドバッジ、SIGMA、TAMRON
重さは気にしない、一番良いのを頼む
レッドバッジ
比較表
品名 | XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II | XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ | XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS | XF16-80mmF4 R OIS WR | XF16-55mmF2.8 R LM WR | XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR | Contemporary 18-50mm F2.8 DC DN | 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
メーカー | 富士フイルム | 富士フイルム | 富士フイルム | 富士フイルム | 富士フイルム | 富士フイルム | SIGMA | TAMRON |
発売時期 | 2013/10 | 2018/3 | 2012/11 | 2019/9 | 2015/2 | 2024/6 | 2022/12 | 2022/07 |
画角 | 16-50mm (35mm判換算: 24-76mm相当) | 15-45mm(35mm判換算: 23mm~69mm相当) | 18-55mm (35mm判換算: 27-84mm相当) | 16-80mm (35mm判換算:24-122mm相当) | 16-55mm (35mm判換算: 24 – 84mm相当) | 16-50mm (35mm判換算: 24-76mm相当) | 18-50mm (35mm判換算: 27mm-75mm相当) | 17-70mm (35mm判換算: 25.5-105mm相当) |
F値 | F3.5-F5.6 | F3.5-F5.6 | F2.8-4 | F4 通し | F2.8 通し | F2.8-4.8 | F2.8 通し | F2.8 通し |
重量 | 195g | 135g | 310g | 440g | 655g | 240g | 285g (Xマウント用) | 525g |
サイズ | (最大径) 62.6mm (収縮時長) 65.2mm (伸長時長) 98.3mm | (最大径) 62.6mm (沈洞時長) 44.2mm (収縮時長) 62.1mm (伸長時長) 65.2mm | (最大径) 65mm (収縮時長) 70.4mm (伸長時長) 97.9mm | (最大径) 78.3mm (収縮時長) 88.9mm (伸長時長) 131.5mm | (最大径) 83.3mm (収縮時長) 106mm (伸長時長) 129.5mm | (最大径) 65mm (長さ) 71.4mm ※インナーズームのため長さは一定 | (最大径) 61.6mm (収縮時長) 76.8mm (伸長時長) ? | (最大径) 74.6mm (収縮時長) 119.6mm (伸長時長) ? |
最短撮影距離 | 15cm~ | 13cm~ | 30cm~ | 35cm | 30cm~ | 24cm | 12.1cm~ | 19cm~ |
絞りリング | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ (電子絞り) | × | × |
価格帯 (2024/7現在) | (新) – (古) 2.3万円 | (新) 4.2万円 (古) 1.9万円 | (新)- (古) 5万円 | (新) 11万円 (古) 7.4万円 | (新) 16万円 (古) 12万円 | (新) 9.9万円 (古) – | (新) 7.1万円 (古) 6.8万円 | (新) 8.4万円 (古) 7.5万円 |
レンズキットのレンズか? | X-M1 など | X-E4 X-T50 など | X-T3 など | X-T4 など | X-T50 など | – | – | |
その他 | 光学手ぶれ補正 | 沈洞式 光学手ぶれ補正 | 光学手ぶれ補正 | 防塵防滴 光学手ぶれ補正 | 防塵防滴 レッドバッジ | 防塵防滴 最新世代 | 簡易防塵防滴 | 簡易防滴 光学手ぶれ補正 |
公式サイト | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/discontinued-lenses/xc16-50mmf35-56-ois-2/ | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xc15-45mmf35-56-ois-pz/ | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf18-55mmf28-4-r-lm-ois/ | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf16-80mmf4-r-ois-wr/ | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf16-55mmf28-r-lm-wr/ | https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf16-50mmf28-48-r-lm-wr/ | https://www.sigma-global.com/jp/lenses/c021_18_50_28/ | https://www.tamron.com/jp/consumer/lenses/b070/ |
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